人のアトピー性皮膚炎と犬のアトピー性皮膚炎

うちの子アトピー性皮膚炎なんですって犬、多いですよね。それ本当に、アトピー性皮膚炎なんでしょうか?

アトピー性皮膚炎と診断されていても、実際にはそうじゃないケースも多いので注意が必要です。

ちなみに、「猫アトピー性皮膚炎」という病名は存在しますが、それが人のアトピーに相当するかに関して研究者達の間で意見が別れています。そしてその病態を、「非ノミ非食物アレルギー」と呼んでみたりと、いささか混乱が生じているようです。

本稿では、人と犬のアトピー性皮膚炎について考えていきます。

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人のアトピー性皮膚炎とは

まずは、人のアトピー性皮膚炎について少し触れていきたいと思います。

アトピー性皮膚炎の「アトピー」という言葉は、ギリシャ語のアトポス(atpos)という言葉が語源となっており、その意味は奇妙なという意味です。

アトピー性皮膚炎という病名は、1923年に命名されたと言われています。

アトピー性皮膚炎は、皮膚の代表的な現代病で、”アトポス”が示すとおり原因は明確には解明されおりませんが、遺伝的素因も含んだ多因性の疾患つまり、複雑に様々な原因が絡み合った疾患と考えられています。

日本皮膚科学会ではアトピー性皮膚炎を、「増悪・寛解を繰り返す、そう痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ」と定義しています。

そしてアトピー素因とは、①家族歴・既往歴(気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎のうちいずれ、あるいは複数の疾患)、または②IgE抗体を産生し易い素因と定義されています。

気管支喘息やアレルギー性鼻炎・結膜炎(代表的なものは花粉症)、そしてアトピー性皮膚炎は、根本的には類似している病気です。

どういうことかというと、通常我々の免疫細胞は、細菌やウイルスなど有害なものから身を守るためのシステムとして機能しますが、アレルギーではダニやハウスダスト、スギやイネ科の花粉、卵や牛乳といった、生体に対して無害なものを免疫細胞が過剰に攻撃してしまう状態です。

そしてこれが起きる場所により、気道粘膜で起きれば気管支喘息、目や鼻の粘膜で起きればアレルギー性鼻炎や結膜炎、皮膚で起きればアトピー性皮膚炎といった具合になります。

つまりアトピー素因を一言でいうなら、免疫が過剰になりやすい状態と言えるかもしれません。

人ではこれは”遺伝しやすい”と言われていますが、アトピー遺伝子があってそれが遺伝するという単純なものではないため、アトピー素因という言い方をされます。

人のアトピー性皮膚炎の病態

人のアトピー性皮膚炎では、おおきく3つの病態が関与すると考えられています。その3つとは、皮膚バリア、アレルギー炎症、痒み(掻痒)です。

皮膚バリア機能は、おもに表皮の角層が主な役割を果たしています。具体的には、①セラミドなどの角層細胞間脂質、②ケラチンやフィラグリンなどの代謝産物などを主成分とする角層細胞の実質部分、③角層細胞の細胞膜の裏打ちタンパクである周辺帯という3つの要素が皮膚バリア機能の維持に重要であることが知られています。

そして皮膚バリア機能の低下は、アレルギーの原因となるダニや花粉など(アレルゲン)の皮膚への侵入のしやすさにつながります。アレルゲンは、免疫細胞により排除される方向へと誘導されますが、その際にアレルギー炎症が起こります。

人のアトピー性皮膚炎では、ヒスタミン H1 受容体拮抗薬(抗ヒスタミン薬)が 著効する蕁麻疹と異なり、アトピー性皮膚炎の痒みに対する抗ヒスタミン薬の効果は人によって異なるので、ヒスタミン以外にも痒みを起こす物質があることが考えられています。近年、免疫細胞が産生するIL-31という物質が痒みを起こすことが分かりました。さらに、アトピー性皮膚炎の皮膚では、痒みを伝達するC 線維という神経の分布が、表皮や角層まで伸長していることが判明し、痒みに過敏となっていることが示されました。

つまりアトピー性皮膚炎では、①皮膚が痒みに対して敏感なので皮膚を掻き壊す、②皮膚を掻き壊すので皮膚バリア機能が低下する、③皮膚バリア機能が低下するのでアレルゲンが侵入し易くなりアレルギー炎症が起こる、という悪循環を繰り返すことになります。

人のアトピー性皮膚炎は何故増えたのか?

アレルギー患者は、日本を始め先進国とよばれる国々で増加傾向にあります。

何故このようにアレルギー患者が増えているのかを、イギリスの研究者が調査しました。それは、1958年にイギリスで生まれた新生児1万5千人の追跡調査を行い、アレルギーの発症に何が影響をおよぼすのかを解析するというものでした。

その研究では、本来なら幼少期に細菌やウイルスに暴露されることで、免疫系のバランスが調整されますが、近代化により清潔な環境で過ごすため、そのバランスが是正されないためアレルギー患者が増えたのではないかと考察しています。

これを、”衛生仮説”と呼びます。

しかしこの仮説は完全には支持されておらず、反対意見も存在します。この理論で考えると、自己免疫疾患と呼ばれる病気は減るはずなのですが、実際にはこれらの病気も増加していることなどが挙げられます。

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