コリネバクテリウム・ウルセランス感染症について思う事

コリネバクテリウム・ウルセランス感染症にかかった女性が死亡したというニュースがありました。屋外で猫に餌をやった際に感染したとみられるとの事でした。

厚生労働省は、「風邪に似た症状が出ている犬や猫を触った場合は、手洗いを徹底するなど注意する」と呼びかけているそうです。

スポンサーリンク

コリネバクテリウム・ウルセランスとは

ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)と同様にコリネバクテリウム属に分類されるコリネバクテリウム・ウルセランス(Corynebacterium ulcerans)という細菌によって引き起こされ、ジフテリアによく似た症状を示す感染症みたいです[1]。

ジフテリアは上気道粘膜疾患ですが、眼臉結膜・中耳・陰部・皮膚などがおかされることもあるそうです[2]。また感染、増殖した菌から産生された毒素により昏睡や心筋炎などの全身症状が起こると死亡する危険が高くなりますが、致命率は平均5〜10%とされています[2]。現在我が国ではトキソイドワクチンの接種により患者は激減しており、年間数例が散発的に報告されるだけのようです[2]。ジフテリアの症状として扁桃・咽頭周辺に白〜灰白色の偽膜が形成されるとされており、この「偽膜形成」が特徴のようです[2]。

なお、前述のジフテリアワクチンは、近縁疾患であるウルセランス感染症にも有効なようです[1]。

ウルセランス感染症については、ジフテリア様の臨床像をきたす 人獣共通感染症の起因菌であり、一般にウシやヒツジとの接触、または生の乳製品などを摂取することにより感染する[2]とされています。我が国でも2001 年2 月に、ジフテリア様症状を呈した患者からジフテリア毒素産生能を持ったウルセランス菌(C. ulcerans) が分離された事が報告[2]されています。

ウルセランス菌はウシの常在菌であるが、ジフテリア毒素遺伝子を持ったファージが溶原化して、ジフテリア毒素産生能を持つ菌となることがあとされ、ジフテリアの類似疾患を起こす病原体として注意が必要である[2]と考えられています。

犬や猫のウルセランス菌は常在菌?

今回、人の死亡事例があったことで、「猫」のウルセランス感染症が取り上げられているので、猫さんが話題に上がっていますが、過去の人のウルセランス感染症の25人の事例[1]を見る限り、犬との接触が関与している人もいるので、猫に限らず犬もという事でしょう。

また、少なくとも牛に関しては常在菌との位置ずけなので、牛からウルセランス菌が見つかっても不思議じゃないというか普通にいるということです。

ウルセランス菌、犬、猫、牛、羊からが見つかっているし、特に牛は常在菌であるようです。仮説として、犬や猫に関しても牛と同様に常在菌ではないかとも考えられます。例えば、猫引っ掻き病のように、猫自身には問題がないが人に感染するとリンパ節が腫れるようなイメージではないのかと思っています。もう一つの仮説として、牛がウルセランス菌を常在しており、人、犬、猫はそこから感染が広がっているとも考えられます。

データとして、健康な犬や猫を調べた時に、何頭がウルセランス菌を持っているのかというのがあると非常に参考になると思います。例えば健康な犬や猫を100頭調べて50~60頭から出れば常在菌として考えてもいいのではないかと思います。

犬や猫では、風邪のような症状と皮膚病変が出るみたいなのですが、これらの症状を示した犬や猫からしか分離されないとすると犬や猫での感染症的な位置付けで良いということになります。

個人的印象としては、犬や猫のウルセランス感染症は、日和見感染的な側面があるのではないかと考えています。

以前のダニから感染するSTFSもそうですが、このウルセランス感染症も昔からあったものの、認知されていなかっただけだと今は思っています。

ウルセランス感染症の患者の共通項?

厚生省が発表している患者データの25人[1]には全て犬や猫との飼育歴ないし接触歴があります。猫に関してはいわゆる「多頭飼育」や「餌やりおばさん」的な人だったのかと思われる人が散見されます。犬も猫も多頭飼育や外では、感染症のリスクが高まると考えらえますので、その影響はあるのかもしれません。

患者さんの年齢に着目して見ると、予想は60~80歳のお年寄りに多いのではないかと思ってたののですが、それに反して10代、20代の人でも感染がみられていました。どうやら免疫力が下がっていると感染するという訳でもなさそうです。

多少なりとも違和感を覚えるのは、もう少し犬や猫ないし牛に触れている人での感染がない事です。それは犬猫そして牛の診療する獣医師やペットショップ、畜産の方での感染がないとう事です。犬や猫の獣医師に関しては少なくとも風邪の症状や皮膚病の症状の犬や猫を相当数診察して、触れる機会=感染の機会があるはずですが、感染者のリストには獣医師はいないですね。実は、結構感染してたけど気が付いてないで、測ると抗体価が高くなってたりということはあるかもしれませんね。

後、病気の性質を考えるに、噛まれたり引っかかれて感染するパターンではなく、くしゃみなどの飛沫感染や皮膚病変への接触による感染などが経路なのではないかと推察します。

犬や猫のウルセランス感染症って分かるのか?

実は今まで一度も、この病気を疑った事がないです。何故ならば、知らなかったので。

犬や猫で風邪のような症状と皮膚病変が同時に出たら疑うとして、飼い主さんにも風邪のような症状が出ればかなり怪しいと疑った方がいいかなと思っています。

猫に関して言えば、ヘルベスウイルスやカリシウイルスなどが風邪の症状を示す感染症として有名ですし、これらのウイルス感染と皮膚病変が同時に出ることもあります。

猫さんが風邪のような症状を示して来院されて、「ウルセランス感染症では?」と聞かれた時に、どうするか今のところいいアイデアがないです。症状だけでは分からないので、細菌検査に出してウルセランス感染症を否定するしかないと思っています。

ここで一つ問題なのは、ウルセランス菌がいること=病気の原因であればいいのですが、実は常在菌であれば必ずしもそうはならないので、注意が必要かと思っています。

最悪、抗生剤が効くようなので抗生剤飲ませちゃうのも手かなと思うのですが、耐性菌の事を考えると、どうかな?とも思ってしまいます。

お金かかってもいいなら、細菌培養検査を勧めて行くのはありだと思いますが。

まとめ

もう少し犬や猫に関する基礎データがそろってくると嬉しいなと思います。基礎データとしては、犬や猫のウルセランス菌の保有率=常在菌と考えられるか?について、細菌培養検査を実施するタイミングについて(風邪症状で全部やるのか?)などが判明してくれば、より良い診療ができるのではないかと思います。

参考文献

[1]コリネバクテリウム・ウルセランスに関するQ&A:厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou18/corynebacterium_02.html (2018/1/16確認)

[2]ジフテリアとは:国立感染症研究所 https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/411-diphteria-intro.html(2018/1/16確認)

スポンサーリンク

シェアする

フォローする