車のメンテナンスと動物病院のインフォームドコンセント

動物病院で大切にしなければならないことの一つに、「インフォームドコンセント」というのがあります。この言葉は、日本語で「説明と同意」という感じに訳されることが多いと思います。

人の医療や動物病院に限らず、客商売では丁寧な説明が必要では無いのかと改めて思う出来事がありました。そしてこれが無いと、人は相手に対して不信感を抱くということが起こり得るので、大切にしなければならないと痛感しました。

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車のメンテナンス

大学時代に車の免許を取得してから、わりと車の運転をしているのですが、実はメンテナンス関係とかよく分かってないんです。

車検とか出しているし、大丈夫かな〜なんて思ってます。

数年前に、長野に車で定期的に行く必要があって、季節は秋だったんですけど徐々に冬になるに連れて車の諸々が気になり始めました。凍結した中央道で事故っても嫌だったので。

そこでガソリンスタンドに行った際に、車の点検をお願いしました。

すると「エンジンオイル」や「タイヤ」の交換などを提案されました。

記憶は定かではないですが、エンジンオイルについては「こんなに汚れてます!」と言われ燃費やらを考慮すると交換する方がいいとのこと。

タイヤについては、ヒビが入って高速道路でバーストする可能性があると指摘されました。

「本当に必要なの?」「鴨にされているかも!?」と思いつつも、よく分からないし遠出の不安もあったので、言われるがままに交換しました。

ただ、エンジンオイルが汚れているかどうかって普段みてないので、汚れていると言われれば汚れて見えますし、汚れてるけどまだ変えなくて大丈夫と言われればそう見えてしまいます。

タイヤのヒビもあると言われればありますし、気にする程じゃないと言われればそう見えます。タイヤの溝の残りとかみたいに、ある程度客観的にミリ数などの数値が測れればまだ良いのですが、感覚的な物だと経験が浅いと物が言えません。

獣医も一緒で、ベテランは勉強しているのももちろんありますが、経験が多いというのが大きいです。過去に何回か経験した病気であれば、「あの病気かも!」って勘が働きます。

ひょっとすると車屋さんは、普段見慣れているからエンジンオイルの汚れとか、タイヤのヒビとか分かっているので、当然客もある程度知っている前提で話をしているのではないかと感じました。

専門的な仕事をやっているとつい相手(お客さん)も、ある程度知識が共有できている前提で話をしてしまうことがあるんだなと思いました。

そして時に、説明が不足すると「専門知識が無いと思って、こっちを騙そうとしているのでは?」という被害妄想に狩られる可能性についても考えさせられました。

動物病院でのインフォームドコンセントについて

日常的な診療の中で、「吐いた」と言うことを主訴で来られることは多いです。個人的には1~2回吐いても元気や食欲があれば問題無いと思いますし、3~4日吐き続けて、元気も食欲も無い場合には要注意で検査を進める必要があるかと思います。

問題は、これらの中間に位置する場合です。

1回吐いただけだけど元気も食欲も無い場合や、3~4日吐き続けているけど元気や食欲がある場合です。

全て検査すればいいのですが、検査をすると費用がかかります。検査も内容によりますが、血液検査とレントゲンと超音波検査などを行えば1~2万くらいするのでは無いでしょうか?

ちなみに「吐く」を診察した時に9割は、対症療法(吐き気どめ等)で治ってる気がします。ただ、残り1割にはしっかりとした基礎疾患(膵炎、異物、内臓疾患等)がありました。

検査をせずとも疑うことはできますが、確定することまではできません。例えば16歳の猫で、だんだん痩せてきて、水をよく飲むようになっていて、来院時に脱水と口臭があれば、恐らく慢性腎臓病の悪化だろうと推定できますが、やはり血液検査をしないと確定できないです。そして、慢性腎臓病の精密検査の過程で腫瘍が見つかるなんてこともあるので、レントゲンや超音波での検査も実施したくなります。

検査をせずに診断ができるか、検査を格安でやれれば問題は解決できるのでしょうが、実際にはどちらも難しいと思います。

特に困るケースは、「吐いてるけど元気そうだし、数日様子をみて良くなりますよね?」とか「死ぬことはないですよね?」と聞かれるケースです。

まず、吐いてる原因がわからないのに、様子を見ていいのかや、死ぬことが無いかは分かりません。せめて検査して、その時点でわかる大きな異常が無いことくらいは、確認しないと責任を持って、様子を見て大丈夫とか死にませんなんて怖くて言えないです。

この流れになると「心配なら検査しますか?」となります。

ここで検査をしてくれるなら、問題は無いのですが、検査をする事に不満を感じる方もいらっしゃいます。その不満は「ちょっと吐いたぐらいで、別に死にはしない」内心思っていて、「この程度じゃ死なないですよ!安心してください。」という流れを期待していたのに、それが裏切られ「検査をしなければ分からない」と言われ、さらに「検査には数万円かかる」と言われたことのギャップに対する怒りや不満なんだと理解しています。

少し先の話に戻りますが、慢性腎臓病の診断自体は血液検査でできるのですが、厳密にいうとなぜその状態になったかを超音波検査やレントゲンなどの画像でまず確認します。場合によっっては、年齢的なものではなく腫瘍や結石などが原因で引き起こされているとこがあり、その場合には治療法が異なってきます。また尿検査で比重や蛋白を見たり、血圧を測定する必要もあります。どこまで突き詰めて検査するかは、病院の方針や獣医さんの判断だと思います。検査をすることは悪いことでは無いですが、動物や金銭的な負担を考えると、どこまでやるかは考えものです。極端な例ですが、さっき保護した野良猫と16年連れ添った猫で、同じにするのは難しいのでは無いでしょうか。

車のメンテナンスと獣医の関係は?

時々「私は素人なので!」と言われることがあります。私は基本的に、インフォームドコンセントを徹底して、一緒に動物の治療を考えていただきたいと思っています。看護師さんなど病院に勤務していたり、ご自身が糖尿病や腎臓病の人は、医療に詳しかったり興味があるので、これがかなりやり易いです。ただ、一度も医療に携わってない人や興味が持てない人もいます。そしてこれが、車に対する私の姿勢だという事に気がつきました。

つまり、車は好きだし良く使う、けどメンテナンスは良く分からない、なるべくならお金をかけたく無いっていうスタンスです。

これって前述の犬や猫は好きだし大切にしたい、でも検査の必要性良くわかんないし、なるべくお金はかけたく無いっていう事一緒なんだろうなと思いました。

そして「それって本当に必要なの?」って疑問は、自分の知らない事だと不安になるし、ガソリンスタンドの店員さんも、初対面の人だったし、勝手にノルマでもあるのかなって不審になってしまっただけのような気もします。

これってやっぱり動物病院も一緒で、たまたま来た病院で高額な検査勧められると一歩引いちゃいませんか?これがいつもワクチンやら健康診断で見てもらっている先生なら安心できませんか?

どうしても動物病院で獣医と飼い主という立場で仕事をしていると、見えなくなってくることがあります。

今回、自分が素人な分野である車のメンテナンスを通して、普段飼い主んさんが不満や疑問に思うだろう点が理解できたのは、いい経験だったなと思っています。

日常生活でも、診療に生きることって発見できるものだと思いました。

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