動物との最後の迎え方

悲しいですが、動物とのお別れは必ず来てしまいます。

いかにいいお別れができるかが重要だと思っていますが、「いいお別れ」かどうかは人によって千差万別かと思います。

よく話を聞いて、飼い主さんの一番の希望に添えるようにしようと日々考えています。

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動物の最後の時が分かるのか?

経験上、最後の時が近いかどうかはだいぶ分かるようにはなって来ました。

死期が分かりやすいものもあれば、分かりにくいものもあります。

基本的には徐々に悪化していく病気(慢性疾患)は、比較的分かりやすいかと思います。例えば心臓病(僧帽弁閉鎖不全など)で、心臓の薬を増やしても呼吸が苦しいままの時や、慢性腎臓病で点滴をしてもBUNや CREが下がらない時などは、「そろそろかな」と考えます。

このような状況では、飼い主さんの方も心の準備ができていることが多いと感じています。

そして、いくつかの腫瘍に関しては、どれくらい平均で生きれるか(生命予後)が統計的に分かっている場合もあるので、それを事前にお話することができる場合もあります。例えば、犬の多中心型リンパ腫などです。

全ての疾患に言えることですが、適切な治療に反応しなくなってくると、「そろそろかな」という感じがしますし、元気消失や食欲不振に体重減少が進んでくると、それがより確信へと変わります。

決定的なものとして、播種性血管内凝固と言われる病態になると、ほぼ確実に死期が見えたと考えています。播種性血管内凝固の説明は難しいのですが、簡単にいうと「小さい血管の中にたくさんの血栓が詰まって、それを溶かそうと身体が頑張った結果、出血が止まらなくなる」という現象です。

この状態になると犬や猫の体に紫色のアザが出来始め、注射を打ったり採血した部位の出血が止まらなくなります。

悪性腫瘍や子宮蓄膿症などの感染症、そして手術などがきっかけでなると言われていますが、この状態になると救命は難しいので、この状態にしないことが命を救うための唯一の方法だと思っています。

しかし、状況を読み違えることもあります。

意識不明で寝たきり状態の猫さんで、延命処置を止めて家に帰って看取ることをお勧めしたら、数日後起き上がってご飯を食べるようになったケースがありました。

このように、嬉しい誤算が起きる場合もあります。

最後の時が分からない場合

逆に分からない場合もあります。

一番は、死なないと思った手術中に死んでしまった場合です。もちろん手術なので、もともと死亡の可能性が0%ではないのですが。

また、いつもより元気が無いという主訴で来院されて、一通り検査をしても特に異常が無く病名が分からず、とりあえず点滴して様子を見ようと思ったら、翌日死んだという場合もあります。

さらに血管系の病気は、予測がほとんど不可能に近いと思っています。

人で言うと心筋梗塞や脳梗塞がそれに相当し、当然同じような病態が犬や猫にも存在します。この場合には、さっきまで元気だったけど急に死んでしまうということがあります。

非常に良くない状況で、亡くなるケースもあります。

検査の途中、ペットホテル中、トリミング中に死んでしまった場合です。無事に過ごせると思っていた期待が裏切られますので、トラブルになることが多いです。心臓病などの持病があった場合もあれば、無かった場合もあります。

事前に心臓病などの持病を伝えられていたかどうかが、一つのポイントだとは思います。

死期が近いと思われる時に、どうしたらいいか

どうしたらいいかは、獣医師側が決めることでは無く、飼い主さん側が最終的に決定することであると考えています。

そして獣医師は(予測可能な範囲で)可能な限り、飼い主に現状を説明する義務があると考えています。

その説明の中で、最善と思う方法を選んでいただければと思っています。

私は回復の見込みが限りなく0に近く、数時間ないし数日以内で亡くなる可能性が極めて高い場合は、最後の時を家で看取ってもらうことを勧めています。

やはり犬や猫は、動物病院の冷たいゲージ中で亡くなるよりも、ずっと一緒にいた家族と過ごす方がいいのではないかと考えています。

先の例でいうと、心臓病や慢性腎臓病の末期、そして播種性血管内凝固に陥った場合などです。

一方で、亡くなってしまう可能性は高いけど、ここを乗り切ればなんとかなるという場合には、入院を続けてお勧めします。

例えば、子宮蓄膿症や糖尿病の末期(ケトアシドーシス)などです。

私の基本的な方針は、前述の通りなのですが、中には「家で様子をみるのが大変だから」や「1日も長く生かしてあげたいので」という理由で死ぬまで入院を希望する方もいます。

逆に、費用面で入院を希望されない方もいますし、助からないのならといって安楽死を希望される方もいます。

これらの希望については、可能な限り尊重させていただいています。

繰り返しになりますが、10人の飼い主がいれば10通りの最後の迎え方があるのだろうと考えています。

それはその人達の死生観、宗教観、価値観、家族構成、収入などの背景によるものでは無いかと、推測しています。

実際に動物病院でどうすればいいか?

命の危険があるときには、具体的に分かる範囲で獣医さんとよく話をするといいでしょう。

まずは検査等の結果から、死亡の可能性や生存期間が予測できるのか?治療や入院の費用がいくらくらいかかるのか?などは随時聞いておくようにしましょう。

しかし、初期に全てを予測することは、不可能です。

その後の経過が良ければ、退院も見えて来て、費用も安いと思います。しかし、経過が悪ければ、どんどん検査や治療を追加する必要がありますので、費用がかさむことが多いです。

また、入院中に呼吸や心拍が止まることがあります。そういう時に、蘇生処置を希望するのかどうかや、助かる見込みが低くなった時に家に連れて帰りたいのか、それとも希望がある限りギリギリまで入院をさせたいのかなども、話あっておくと良いでしょう。

動物病院では人間と違い、犬や猫でも寿命が15年前後くらいと短いので、生死に直面する場面に多く出会います。

ある意味慣れた光景ではあるのですが、いい最後を迎えさせてあげられて、飼い主さんに感謝の言葉をもらえた時は、この仕事をやっててよかったなと思う瞬間です。

  • 死亡する可能性のある入院の時に聞いておきたい事
    ・病名
    ・死亡の可能性
    ・予想される生存期間
    ・入院の費用
    ・蘇生処置の実施の有無
    ・亡くなる時にどうしたいのか(家で看取りたいか)
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