医療と獣医療の違いを考える「メラノーマ」

人にも犬や猫にも、メラノーマという腫瘍が存在します。

メラノーマの日本語訳として、「悪性黒色腫」という言葉が用いられます。獣医療でも、同様に用いられる事が多いです。

メラノーマは、皮膚のメラニンという色素を作るメラノサイトという細胞が、腫瘍化したものという点は共通しています。そういう意味では、人のメラノーマも犬や猫のメラノーマも、同じものです。

しかしながら、実際には大きな違いが存在します。

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人のメラノーマ

人のメラノーマは非常に悪性皮膚がんの一つであるとされており、「ほくろのがん」とか「ほくろのようながん」と表現されています[1]。

メラノーマのできやすい部位が4つに別れており、末端黒子型という足のうらや手のひら、手足の爪部(正確には爪下部)などに発生しやすいタイプが、全体の約30%の発生があり、日本人に最も多いとされています[1]。

またメラノーマの発生原因として、メラノーマの発生が欧米の白色人種で日本人より十倍以上多いというデータがあることから、紫外線の影響が考えられており、またメラノーマの患者さんで、ほくろを時々いじったり、傷つけたりしてから、ほくろが変化してきたと言う方がいることから刺激が原因となると考えられています[1]。

また、がんの治療成績を示すものの一つに、生存率があります。メラノーマなどのがんは、その進行の程度を、「病期(ステージ)」として分類します。メラノーマの病気はがんの厚さ、リンパ節や別の臓器への転移があるかどうかによって決められ、0期、I期、II期、III期、IV期の5つの病期に分類されています[2]。その分類で5年生存率をみてみると、ステージ1で86.2%、ステージ2で79.6%、ステージ3で53.1%、ステージ4で11.0%と報告されています[2]。

犬や猫のメラノーマ

犬のメラノーマは比較的多い皮膚腫瘍であり、皮膚腫瘍の5~7%を占めるとされています。一方、猫のメラノーマはまれで、皮膚腫瘍の0.8~2.7%であるとされています[3]。

犬のメラノーマは、色素の濃い皮膚を持つ高齢の犬(平均9歳)で認められるとされています。犬のメラノーマは、主に有毛部皮膚や口腔内に発生することから日光(紫外線)の影響が発生要因になっているとはいえないと考えられています[3]。

犬の皮膚メラノーマは良性あるいは悪性の挙動をとり、体のあらゆる部位に発生するとされています。そして有毛部皮膚に発生したメラノーマの85%以上は良性の挙動を取り、口腔および粘膜移行部(眼瞼を除く)のメラノーマの大部分と爪床に発生したメラノーマの約50%は、悪性の挙動をとります[3]。

なお、猫のメラノーマは大部分が頭部(鼻や耳介)に発生し、四肢に発生することはそれより少ないとされています。また、多くは眼球または眼瞼に発生するとされています。そして皮膚メラノーマは良性の場合も悪性の場合もあるとされています。さらに猫の眼球メラノーマは、口腔内メラノーマより悪性の挙動をとるとされています[3]。

猫のメラノーマはまれであるので、主に犬のメラノーマと人のメラノーマを比較したいと思います。

人と犬や猫のメラノーマの違い1:名前

メラノーマという言葉が、悪性腫瘍を示す言葉である以上、「良性のメラノーマ」という言葉には違和感があります。日本語にすると、「良性の悪性黒色腫」になりますから。

犬や猫のメラノーマは良性であることも多いので、獣医の本でも「メラノサイト腫瘍」や「メラノサイトーマ」という言葉が用いられており、これらの言葉が犬や猫の腫瘍を的確にあわわしていると思われます。

つまり、「メラノサイト腫瘍」を切除し病理検査に出して、そこで悪性であれば「メラノーマ」と呼び、良性であれば「メラノサイトーマ」と呼ぶ事が一番正確だと考えています。

しかし実際問題、今まで長年使ってきたから今更変えずらかったり、飼い主さんに説明する際に「メラノサイトーマ」って馴染みがなくて使いずらいですね。

個人的には、「ほくろの良性腫瘍」と「ほくろのがん」って説明してます。

人と犬や猫のメラノーマの違い2:予後

人のメラノーマは、非常に悪性の皮膚がんなので、安易に飼い主さんに「皮膚のメラノーマですね」というと医療知識がある人は、かなりショックを受けるでしょう。

しかし、犬のメラノーマは発生部位によりますが、皮膚のメラノーマであれば85%以上が良性なので、むしろ「よかったですねメラノーマですね」という感じになります。良性のメラノーマが完全に切除できてれば、命の危険はありません。

ただし、犬の口腔内メラノーマはほぼ悪性で、転移率高いとされています。犬の口腔内にできるメラノーマが人の皮膚にできるメラノーマと、予後や悪性度の点で似ていると考えられます。

人と犬や猫のメラノーマの違い3:発生原因

人では、白色人種がメラノーマになる危険率が高いとされている一方、犬の皮膚メラノーマは色素の濃い皮膚を持つでの発生が多いです。

同様に、白色人種にメラノーマが多い理由として紫外線の影響が考えられていますが、犬の場合には有毛部での発生が多いことから、日光(紫外線)の影響が発生要因になっているとはいえないと考えられています。

これらのことから、同じメラノサイトという細胞の腫瘍でありながら、発症要因に違いがあることを感させます。そしてこれらのことが、人と犬の皮膚メラノーマの違いに繋がっているのではないかと推察します。

まとめ

人のお医者さんや看護師さんが、飼い主として来られることもあります。概ね人医療と獣医療で、病気に対する共通の認識を持つことが可能ですが、時に同じ言葉で違う意味を想像する場面に出会います。この「メラノーマ」などが、まさにその典型です。

我々は、もちろん犬や猫の病気を中心に学んでいるのですが、人の病気を併せて学ぶことでより理解が深まるのではないかと、日々考えています。

最近は、犬や猫でも人間並みの検査や治療が要求される時代になってき他ので、獣医療も人医療に追いつけるように頑張っていきたいです。

参考文献

[1]メラノーマ(ほくろのがん):公益社団法人日本皮膚科学会 https://www.dermatol.or.jp/qa/qa12/q09.html (2017/12/26確認)

[2]悪性黒色腫(皮膚):国立がん研究センター がん情報サービス https://ganjoho.jp/public/cancer/melanoma/print.html(2017/12/26確認)

[3]Thamm D. H., Vali D. M. : 皮膚および皮下織の腫瘍. In: 小動物臨床腫瘍学の実際. 加藤元監訳. PP399-402. 文永堂出版株式会社. 東京. 2010.

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