人と猫の色素性蕁麻疹

犬や猫の病気は概ね人で同様の病気があるかを考えて、診断名をつける事が多いです。

猫では、稀な病気ですが「色素性蕁麻疹」と呼ばれている病気があり、人と同様の病気であると考えられているので考察して見たいと思います。

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人の色素性蕁麻疹

色素性蕁麻疹は、1869年に最初に報告され、その時には「chronic urticaria leaving brown stasis」と呼ばれていましたが、1878年に「urticaria pigmentosa(=色素性蕁麻疹)」と命名されました。

この病気は病理学的に真皮での肥満細胞の密な増殖からなっており、この病気は皮膚病変以外にも肥満細胞が肝臓、脾臓、骨髄、リンパ節等にも認められることが明らかにされました。

そのため近年では、「mastocytosis(=肥満細胞症)」という概念で考えられることが多いです[1]。

そのため色素性蕁麻疹は、皮膚限局の肥満細胞症と全身性肥満細胞症の部分病変としての皮膚病変という二つの意味を含みます。

色素性蕁麻疹の診断は、①色素斑、②ダリエ徴候、③皮膚病変の肥満細胞浸潤という3主徴で診断されます[1]。

色素性蕁麻疹は現在まで多くの分類が提唱されており、「皮膚限局型」と「全身汎発型」に分けたSagherの分類や、肥満細胞の多寡や年齢を加味した「Unna型」、「Deutrelepont-Jadassohn型」、「Arning型」、「Rona 型」の4つに分類したAdlerの分類がります。

診断には、皮膚生検を行います。

皮膚肥満細胞症では、腫瘍性に増殖を続けるタイプと、自然治癒するタイプがあると考えられています。

特に小児の皮膚肥満細胞症は、ほとんどが自然治癒するとされていますが、その詳しいメカニズムについては解明されていません。
その一方で、成人の色素性蕁麻疹は慢性の経過をたどることが多いそうです。

治療は、症状によってステロイド外用薬あるいはステロイドの局所注射が行われます。また皮膚症状の悪化や痒みを抑えるために、抗ヒスタミン薬の内服も有効と考えられています。

色素性蕁麻疹を調べる過程で、小児の頃に色素性蕁麻疹ないし皮膚肥満細胞症と診断され、大人になれば治ると信じていたにも関わらず治らずに、それについて悩まれている方のブログやコメントなどを拝見しました。

慢性的な皮膚の痒みのストレスみならず、人の場合には見た目で悩まれる事も多いという現実を垣間見た気がしました。

猫の色素性蕁麻疹

獣医学では、人の色素性蕁麻疹に相当する病気が犬や特定の猫種に発生することが報告されています。

色素性蕁麻疹は肥満細胞症の最も一般的な症状で、様々な黄褐色〜茶褐色の班状から丘疹状の病変として特徴づけられます。色素性蕁麻疹の報告されている猫種として、スフィンクス、ヒマラヤン、デボンレックス、シャムがあります。

色素性蕁麻疹の猫は、頭部や頚部に斑状ないし丘疹痂皮状の発疹を認めます。毛が無いため、スフィンクスでは腹側、尾、そして四肢端にまで急速に広がる傾向があります。

痒みは様々で、中程度〜重度です。猫の中には、色素沈着を起こすものもいます。皮膚描記症(dermatographism)は、どんな猫でもみられることはなかったとされています。

家族歴がない場合には、猫の丘疹性痂皮病変(粟粒性皮膚炎)を起こす全ての原因を考える必要があります。皮膚生検では、少数の好酸球や好中球を伴った良く分化した肥満細胞が中程度〜重度の血管周囲性そして真皮や皮下に浸潤しているのが見られるとされています。

末梢血中の好酸球や好塩基球が見られるかもしれませんが、今の所、内臓組織への浸潤は確認されていません。

色素性蕁麻疹の肥満細胞の過形成は、家族性か特発性であるので、常に治癒することが期待できる訳ではありません。グルココルチコイド(ステロイド)と抗ヒスタミン薬の治療で、症状をコントロールすることが可能であるとされています。シクロスポリン(7.5mg/kg)の治療は、少ない副作用での長期間のコントロールに対して有望であると考えられています。

人と猫の色素性蕁麻疹について

人と猫の色素性蕁麻疹が同じ病気であるかどうかは不明ですが、ほぼ同様の病気として捕らえられています。

人の色素性蕁麻疹は、肥満細胞種症の症状で通常若い年齢(6ヶ月以内)で発症し、思春期頃には50%の子供が自然に寛解しますが、少数ですが全身性に病気が進行する場合もあります。

猫の色素性蕁麻疹に関する報告では、若齢の猫で症状を発症して老いることや同様の臨床所見と病理所見がみられ、予後が良いことなどの似ている点があります。

色素性蕁麻疹の猫の数が非常に少ないため、この病気の全身性への進行を除外することが出来ないと考えられています[2]。

そしてこの病気が人と同じ病気かどうかがはっきりするまでは、「猫色素性蕁麻疹」や「色素性蕁麻疹様皮膚炎」のような言葉を使うべきでなく、「好酸球性肥満細胞性丘疹性皮膚炎」のような言葉が適切ではないかと考える人もいます[2]。

いずれにせよ、若齢で見られることや、同一猫種での発生や家族性があることなどを鑑みると、遺伝性ないし先天性疾患と位置付けられると思います。

逆に特定の猫種で若齢での丘疹性皮膚炎ないし粟粒性皮膚炎を見た場合には、この病気を鑑別のひとつに入れるべきでしょう。

人の免疫もそうですが、犬や猫の免疫も分からないことが多いです。何故、このように肥満細胞が活発に活動をする状態になってしまうのかが解明できると、治療に活かせるのではないかと思います。

また、これらの猫が場合によっては人の疾患モデルとなることがあるかもしれません。

参考文献

[1]Yuji Yamashita, et al.Three Cases of Urticaria PigmentosaSkin Research, 40:57-61. 1998.

[2]C Noli et al. Papular eosinophilic/mastocytic dermatitis (feline urticaria pigmentosa) in Devon Rex cats: A distinct disease entity or a histopathological reaction pattern?, Veterinary Dermatology, 15, 253–259, 2004.

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